塩分控えめのドッグフードとは

犬にも塩分が必要

AAFCO(米国飼料検査官協会)によると、犬の1日に必要なナトリウム量は乾物量換算で子犬が0.3%以上、成犬が0.08%以上となっています。また環境省によると、一般的に犬が1日に摂る食塩の量は人間の3分の1程度で良いとされています。犬にちょうど良い塩分量は人間より少なめですが、人間と同様、犬にとっても塩分は体の機能を維持するために大変重要な栄養素です。

塩分の働き

塩分は犬の体内では血液中の主要な陽イオン(ナトリウムイオン)となり、浸透圧を調節して細胞間液や血液の循環量など水分の移動をコントロールします。また、酸とアルカリのバランスを保ち、神経の伝達や筋肉の収縮、消化した栄養素の吸収などにも関わっています。

塩分が足りないとどうなる?

塩分が足りないとき、犬の体内では血液中のナトリウム濃度が低下した状態となります。犬は塩分が足りないと感じると、人の手足や自分の足の裏を舐めたり他の犬の尿や土などを舐めたりして、塩分を補おうとする行動をとることがあります。さらに低ナトリウム血症になると、だるさ、食欲不振、筋肉痛、意識障害、けいれんなどが起こります。低ナトリウム血症の多くは、腎臓から尿とともにナトリウムが過剰に排出されたり、体内の水分が増加し過ぎたりすることが原因となって生じます。治療ではおおもとの疾患を治しつつ、並行して生理食塩水の点滴などによりナトリウム濃度の回復を図り、体液の浸透圧濃度の補正を行います。

塩分が多すぎるとどうなる?

塩分が多すぎるとき、犬の体内では血中のナトリウムが多くなりすぎており、浸透圧の関係で血液量が増加して血圧が高めになります。この状態を改善するには、ナトリウムの摂取量を制限するなどにより血圧の調整を行う必要があります。
さらに状態が悪化して高ナトリウム血症になると、元気がない、衰弱している、動きがおかしい、発作が出る、昏睡状態になるなどの症状が現れます。塩分過多となる原因は、ナトリウムの排出量と比較して水分の喪失量が多すぎたり、水分の摂取量が少なすぎたりするためです。見た目にはわかりにくいのですが体内は脱水状態となっていますので、ナトリウム量と水分量のバランスを改善していく必要があります。

塩分控えめのドッグフードが必要な犬

塩分控えめのドッグフードが必要な犬は、何らかの理由で血中のナトリウム濃度の調整がうまくいかずナトリウム濃度が高くなりがちで、高血圧になりやすい疾患を抱えた犬で、例えば腎臓病を患っている犬などが当てはまります。犬の腎臓の役割は、老廃物の排泄、体液や電解質のバランス調整、pHのコントロール、ホルモンの産生や活性化などですが、腎臓病の犬はこれらの機能のうちのいずれかが不調となります。そして、腎機能が低下するとナトリウムの排泄にも支障を来たすようになり、また全身性の血圧異常が起こって心臓病などを併発する恐れも生じるため、高血圧への対応も必要となります。そのため、犬の腎臓病の治療では、ナトリウム量を制限した食事療法が取り入れられることが多くなります。

塩分控えめのドッグフード

療法食のドッグフードは総合栄養食のドッグフードに比べて、疾患などで機能不全となっている臓器に負担をかけないよう様々な疾患に合わせて特定の栄養素の量が制限されています。ですので、総合栄養食の栄養基準は満たしていませんが、療法食としての働きは大いに期待できます。例えば総合栄養食ではナトリウムの最低含有量が子犬で0.3%のところを、腎疾患の療法食ではそれ以下に抑えたものもあり、ナトリウムのコントロールが難しい腎臓病の犬に適したドッグフードとなっています。愛犬の体調や体質に不安がある方は、獣医師に相談して療法食を検討してみてはいかがでしょうか。