ドッグフードに使用されている着色料

なぜ着色料を使うの?

着色料は、製品の色を一定にしたり、安心できる色や、原材料がイメージしやすい色にしたりするために使われます。原材料のもともとの色は、加工すると失われてしまったり、製造して間もない頃の色も、長く保存すると色が変わってしまったりします。また、同じ種類の原材料でも、産地や収穫時期によって違う色になることもあります。
一方、人は状況を認識したり判断したりする際に、目から入る情報に頼る割合が高く、いつも食べているドックフードがいつもと同じ色であることや、原材料の新鮮な色に近いことで、安心することができます。ですから、ドックフードメーカーは、品質が良いことや時間がたっても劣化していないこと、同じドッグフードならいつ購入しても同じ品質であることを、言葉ではなく視覚的に伝えるために、着色料を使用することがあります。また、他のドッグフードと違う色にすることで他社との差別化を図ることもできます。こうしてみると、着色料には様々なメッセージが込められているのですね。

着色料の種類

ドッグフードに使用する着色料

一般社団法人ペットフード協会は、ペットフードに使用する添加物の自主基準を定め、ペットフードにも人の食品や家畜などの飼料に用いることが認められている添加物を使用するよう、ペットフード業界に呼びかけています。人の食品の添加物として認められている着色料には、タール系色素や無機顔料など化学合成により作られる合成着色料と、花や野菜や虫など、自然界のものから取り出した天然着色料があります。

タール系の合成着色料

日本で食品添加物として指定されているタール系色素は12種類(*1)あります。
タール系色素は昔はコールタールから作られていましたが、今は原油から得られるナフサを原料として作ります。少量で鮮明な色になり、色が長持ちします。もちろんまったく変色しないわけではなく、酸化・還元や光などで色が変わることもあります。高温には比較的強い色素です。タール系色素は、過去に発がん性などが発見されて指定の取り消しが相次いだこともありましたが、現在日本で指定されている12種類は、決められた使い方をすれば毒性はないと試験で確認されています。
海外でのタール系色素の使用状況は日本とは異なっていて、日本で指定されていても海外では禁止されているものもありますし、逆に日本では使用禁止ですが海外では使用されているものもあります。

*1. 赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号の12種類です。

無機顔料とその他の合成着色料

天然の原料を化学合成して作り出す着色料もあります。白色に使われる二酸化チタンと赤色に使われる三二酸化鉄は鉱物由来の無機顔料です。また、クロロフィルやクロロフィリンなどの葉緑素類は緑色の着色料になりますが、銅や鉄と化学反応させて安定させたり、水溶性のナトリウム塩にしたりして使用します。その他、β-カロテンなどのビタミン類を化学合成で作り出し、着色料として使うこともあります。

天然着色料

日本人は自然な色の食品を好む傾向があり、古くから天然の着色料が多く使われてきました。現在指定されている天然着色料は、カラメル、ベニバナ、カイガラムシといった動植物などから作られていて、自然界の色に近い着色ができます。
一方、原材料の色が一定ではないのでいつでも全く同じ色にはならず、また味や香りが一緒についてしまうこともあります。合成着色料と比べて光や熱に弱く、色の濃度が低いため添加量が多くなりがちです。合成着色料より安全というイメージを持つ方も多いと思いますが、中にはアカネ色素のように指定が取り消された例もあり、長く使用されてはいるものの、安全性に関する検証が十分ではないものもあります。

ドッグフードの着色料は飼い主の安心のため?

着色料は保存料などと違って品質を確保するために必須の添加物ではありません。着色料はおいしさや品質の良さなどを視覚的に伝えるために使われますが、実は犬と人では眼の仕組みが異なっています。
人と比べて犬の網膜には色を認識するための錐状体が少なく、しかも青と黄色とその中間色しか識別しないため、赤はグレーのように見えると考えられています。ですから、色についての判断も犬と人ではかなり違う可能性があるのです。
そうだとしたら、着色料のおかげで人から見てなかなか色が変わらないドッグフードよりも、「色のばらつきはありますが品質には影響ありません」と書かれている着色料なしのドッグフードを選択した方がいいような気もします。ですが、色が違っていても本当に品質は変わらないの?と心配にもなり、愛犬家の皆さんには悩ましいところだと思います。ともあれ、どんなに質の高いドッグフードでも飼い主さんが納得したり安心したりできなければ、愛犬には届きません。愛犬家の皆さんは色だけではなく別の情報からも、品質の良し悪しを確認できるようになるといいですね。