手作りドッグフードの作り方

手作りのドッグフードを作りたい

愛犬に手作りのご飯を食べさせてあげたいと思ったことがある方は少なくないと思います。人間が作りたてのご飯を食べていると、欲しそうにじっと見られてついついあげたくなるけれど、人間の食事は犬にとっては塩分が多すぎるなど犬の健康には良くないことも多く、ダメだよと言いながらも何となく辛い気持ちになったりします。愛犬にも作りたてのご飯を食べさせてあげたいと思うのは、例えばそのような時でしょうか。

犬に必要な栄養バランス

犬に必要な栄養のバランスは、人間に必要な栄養バランスとは異なります。人間の場合、1日の総エネルギーに対する三大栄養素の割合は、炭水化物50~70%、脂質20~30%、タンパク質13~20%が目安となっていますが、犬の場合は炭水化物60%、脂質15%、タンパク質25%となります。炭水化物はほぼ同じくらいですが、脂質とタンパク質の割合が異なり、犬には人間よりもタンパク質が多く必要となります。また犬は、かんきつ類やにおいが強い葉物野菜、香辛料、お酢などの酸味の強いものは好みませんし、チョコレート、タマネギ、キシリトールなど、食べると体を壊すものもあり、手作りフードに挑戦する場合は事前に確認が必要です。

AAFCOの栄養基準

「総合栄養食」タイプのドッグフードは、それと水だけで犬に必要な栄養が確実に摂れるように計算されて製造されています。ですから、基本的には総合栄養食と同じ栄養バランスになるように手作りフードを作ればよいということになります。日本で総合栄養食と表示して売られているドッグフードは、AAFCO(米国飼料検査官協会)が示した栄養基準に準じて作成するルールになっていますので、AAFCOが示している犬に必要な栄養素を中心に、栄養素を確認してみましょう。

タンパク質

タンパク質は動物性タンパク質と植物性タンパク質がありますが、犬はタンパク質から、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンの10種類の必須アミノ酸を得る必要があります。これらを十分に摂るためには、植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方が適しています。

脂質

犬は脂質から必須脂肪酸であるリノール酸とαリノレン酸を得る必要があります。また、EPAとDHAはαリノレン酸から変換されますが、必要な量を確保するため食物で補う必要があります。

ミネラル

犬に必要なミネラルは、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩化物、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレンの12種類です。ミネラルは骨や歯など体の一部になったり、生理機能を調整したり、代謝にも関わるなど様々な働きがありますが、動物の体内では作り出せないので、食物から摂取する必要があります。

ビタミンほか

犬に必要なビタミン等として、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、チアミンH、リボフラビン、パントテン酸、ナイアシン、ピリドキシン、葉酸、ビタミンB12、コリン(ビタミン様物質)の11種類があります。ビタミンは生理機能の維持や代謝に関わる働きをしますが、犬の体内ではほとんど作り出すことができず、食物から得る必要があります。

炭水化物

炭水化物を摂取するのはエネルギー源とするためですが、AAFCOでは炭水化物の必要最低摂取量が定められていません。ただしこれは十分なタンパク質を与えられている場合ということのようです。タンパク質や脂質もエネルギーにはなりますが、やはり素早くエネルギーになってくれる糖質を得るため、また腸の働きを整える繊維質を摂るためにも、炭水化物は摂った方が良いと思います。
犬の唾液にはアミラーゼという消化酵素が殆ど含まれていませんので、生のデンプンは消化不良となりますが、炊き立てのご飯のように調理されて糊化(α化)したデンプンであれば消化できます。

ドッグフードを手作りしてみる

手作りドッグフードの作り方ですが、レシピの栄養を考える際は、犬は人間よりもタンパク質は多め、脂質は少なめ、塩分も少なめ(塩分は人間の3分の1程度)ということに気を付けてください。次に食材は、犬に与えてはいけない食材を確実に避け、食物アレルギーがある犬はその食材も避けてください。それからフードの大きさについてですが、犬は基本的に歯で食物をすりつぶして消化を助けることはできず、飲み込んでから強力な胃酸で溶かして消化するので、飲み込みやすいサイズにしてあげてください。これらのことを頭に置いて、人間の食事を少し変更して作ってあげると良いと思います。
参考までに、手作りフードの食材の例を紹介します。栄養素ごとに食材を分けましたが、それぞれの食材はいろいろな栄養素が含まれていますので、大まかな分類と考えてください。

タンパク質・脂質

  • 鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉(脂身の少ないもの。骨は取り除いてください。寄生虫や消化不良の心配もあるので、火を通した方が無難です。)
  • サケ、タラ、アジ、イワシ、カレイ(新鮮なもの。骨は取り除いてください。寄生虫や消化不良の心配もあるので、火を通した方が無難です。)
  • チーズ(塩分控えめのもの)、卵(火を通したもの)、大豆製品(豆腐、おから)
  • オリーブオイル

ミネラル・ビタミン

  • カボチャ、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、ブロッコリー、ニンジン、キャベツ、レタス、キュウリ、トマト、大根、白菜、かぶ、キノコ類(硬いもの、デンプンを含むもの、キノコ類などは、茹でたり蒸したりしてください。)
  • 昆布、ひじき、わかめ(火を通して柔らかくして小さく刻んでください)
  • だし汁(昆布、かつお節、しいたけ)
  • バナナ、リンゴ、ナシ、イチゴ、スイカ、柿(果物は糖分が多いのであげすぎないようにしてください。)

炭水化物

  • 白米、玄米、雑穀(いずれも柔らかく炊いてください。)

手作りだけでは不安も

犬にとって必要な栄養素はたくさんありますし、各々の量や各栄養素の割合も犬の健康にとってとても重要です。ですが、一般家庭では手作りフードで本当に栄養が足りているのかを確かめることはできませんし、きちんと栄養バランスの取れた手作りフードを生涯食べさせ続けていくのは大変なことだと思います。ですので、総合栄養食のドッグフードと併用で、時々作ってあげてはいかがでしょうか。