低アレルギーのドッグフードとは

犬の食物アレルギーとは

犬のアレルギーには、ノミの唾液や体の一部に反応するノミアレルギー、接触性のかぶれ、カビや花粉やハウスダストなどによる吸引性アレルギー(アトピー)などさまざまなものがあります。そして犬が発症するアレルギーの一つに、食物やその成分が原因でアレルギー症状が出る食物アレルギーがあります。

食物アレルギーが起こる仕組み

食物アレルギーは、食物に含まれるたんぱく質を免疫系が異物と間違えるために起こります。アレルギーの原因物質(アレルゲン)の主要なものはタンパク質です。分子が大きくて消化されにくいタンパク質が食物に含まれていると、体内の免疫システムがそれをアレルゲンと認識し、対抗してIgEという抗体を作り出します。そして、同じアレルゲンが再び体内に入って来た時に、その抗体が作用してヒスタミンなど炎症を起こす物質が放出されるために、アレルギー反応が出るのです。
もう少し詳しく説明すると、リンパ球のうち免疫反応を調節する役割を持つ、ヘルパーT細胞と呼ばれるTh1細胞とTh2細胞のバランスが崩れ、IgE抗体の産生に作用するTh2が優位になり、IgE抗体の量が増えすぎるという状況が起こります。
このようにIgE抗体が関係して起こるアレルギーはⅠ型と呼ばれていますが、そのほかにも、抗体によらずアレルゲンに直接反応する感作T細胞というリンパ球が関係して起こる、Ⅳ型の食物アレルギーも多いことがわかっています。Ⅳ型は遅延型とも呼ばれ、アレルゲンの摂取からアレルギー反応が出るまでに数時間から2、3日もかかるのが特徴で、原因となる食物がわかりにくくなります。

食物アレルギーが起こる原因

食物アレルギーが起こる原因はIgEが増えすぎるため、そしてIgEが増えすぎるのは、タンパク質を摂りすぎること、肥満のため自律神経の副交感神経が優位になりすぎること、衛生的な生活環境の中で生活するために細菌や寄生虫の感染症が減ったり、抗生物質の多用などで腸内細菌が少なくなったりした結果、細菌などに対処するTh1細胞の働きが少なくなったこと、ストレスにより交感神経でアドレナリンが多く作られることなどが原因ではないかと、これまで考えられてきました。
そして最近は、食物を食べる、つまり経口摂取することに加え、皮膚から入った物質によっても食物アレルギーになることがわかって来ています。人間の事例で言うと、例えば小麦の加水分解成分を保湿成分として含んだ石鹸を使用して小麦アレルギーになった例や、マダニに刺されてマダニが持つa-gal(オリゴ糖の一種で生体内ではタンパク質につながっている)という糖鎖のアレルギーになり、同じ成分を持つ牛肉にもアレルギーが出るようになった例、クラゲに刺されてポリガンマグルタミン酸(PGA:タンパク質を構成するグルタミン酸というアミノ酸の一種がペプチド結合でつながっているもの)という成分のアレルギーになった結果、同じ成分を持つ納豆のアレルギーも出始めた例などがあります。つまり、食べるだけでなく皮膚から入った物質によっても食物アレルギーを発症(経皮感作)することがわかってきたのです。
犬についてはまだ人間ほど経皮感作の仕組みは明らかになっていませんが、考え方としては人間と同じではないかと言われています。

食物アレルギーと食物不耐症の違い

食物アレルギーは飲食により起こる免疫反応ですが、同じように特定の食物に対する拒否反応でも、免疫系ではなく消化器系が引き起こす食物不耐症という反応もあります。食物不耐症は、ある食物を分解するための酵素が不足していたり、食物中の化学物質を処理できなかったり、食べる量が多すぎたりするために起こる消化不良です。食中毒や玉ねぎ中毒やチョコレート中毒などが代表的で、嘔吐や下痢、腹痛、膨満感、頭痛、蕁麻疹、浮腫などが見られます。食物アレルギーと同じような症状もありますが、異なる仕組みによって起こります。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーの症状は、皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器などのさまざまな臓器に出ます。下痢、嘔吐、発熱など症状もさまざまです。かゆみが出ることがとても多く、口や目の周り、指の間や肉球、わきの下、内また、肛門のまわりなどがかゆい、赤い、脱毛している、皮膚がゴワゴワになるなど、全身に症状が見られます。また、細菌による二次感染を併発して中耳炎になることもあります。

食物アレルギーの原因となる食物

食物アレルギーを起こしやすい食物は、牛肉、鶏肉、子羊肉(ラム肉)、大豆、トウモロコシ、乳製品、小麦、鶏卵です。また、豚肉、魚、米などからもアレルギーを発症する例があります。そして、アレルゲン食品が年齢と共に変化することもしばしば見られます。

検査によるアレルゲンの特定

食物アレルギーによる症状を改善するためには、アレルギーの原因となっている食物や成分を摂取しないことが必要になります。ですから、まずは動物病院で検査を行い、アレルゲンを特定することが大切です。そのための検査としては、今まで食べさせていたドッグフードをやめて食べたことのないフードを一定期間食べさせる除去食試験と、元のドッグフードに少しずつ戻してみる食物負荷試験を組み合わせたものや、アレルギーの発生メカニズム別にⅠ型やⅣ型用の血液検査などがあります。

低アレルギーのドッグフードとは

アレルギーの原因となる食物がわかったら、その後はその食物や成分を体内に取り込まない生活をしていくことになります。ドッグフードを変える必要がある場合には、獣医師と相談しながら低アレルギーのドッグフードを検討してください。低アレルギーのドッグフードには、アレルゲンとなるタンパク質を製造過程で加水分解してアミノ酸やペプチドにすることでアレルゲン性を低下させたものや、アレルゲンと特定されたタンパク質を含む原料を使用しないで製造したもの、タンパク源を1種類にするなどごく限られた原材料で製造したものなどがあります。
アレルゲンの特定と食生活の改善には時間がかかることもありますが、症状が軽快する兆しが見えた時には、安堵と喜びの気持ちでいっぱいになると思います。かけがえのない愛犬のために、諦めず、愛犬と二人三脚で頑張ってみてください。